こんにちは、院長の宮脇大です。
今日は、当院の卒業プログラムを卒業された Aさん(40代男性、ご本人の同意のもと、個人が特定されないよう情報を一部改変)のお話をします。
数字や治療内容はリアルです。「卒業ってどんな感じなんだろう?」とイメージが湧かない方に、参考にしていただければと思います。
初診の日、Aさんが座っていた
Aさんが初めて来院されたのは、ある日の夕方でした。
- 40代前半・男性
- 身長 173cm、体重 93kg、BMI 31.0
- 腹囲 102cm、内臓脂肪面積(CT) 142cm²
- 健康診断で脂肪肝・高血圧・脂質異常症を指摘
- 降圧薬を2剤すでに内服中
- 「会社の先輩がここで卒業したと聞いて」と紹介での来院
開口一番、こうおっしゃいました。
「先生、私、何度もダイエットを失敗してきたんです。今回もどうせ・・と思っているんですが、最後にもう一回だけ・・」
その目を見て、私は確信しました。この人は卒業できる、と。
なぜ「卒業できる」と確信したか
ダイエットを「何度も失敗してきた」というのは、実はマイナス材料ではありません。
むしろ、
- 自分の体に関心がある
- 行動を起こす力がある
- 失敗からの学習がある
という意味で、強力な土台です。
ダイエットに完全に無関心な方より、何度も挑戦してこられた方のほうが、仕組みさえ変えれば卒業に近いんですね。
問題は「意志の強さ」ではなく「設計」だった、というのが私の見立てでした。
Month 1:導入と「無理をしない」設計
Aさんと一緒に作った最初の1ヶ月の計画は、こんな感じです。
食事
- 朝食はそのまま(プロテイン + バナナ)
- 昼は社員食堂、ご飯を半分にしてサラダを追加
- 夜の会食は 週2回まで、ビールはハイボール2杯に変更
- 寝る前の間食(これがクセになっていた)を ハーブティーに置き換え
運動
- 平日は通勤で 1駅手前で降りて歩く(片道15分)
- 週末に20〜30分のウォーキング
- ジムには行かない(続かない自覚があった)
薬
- ウゴービ 0.25mg開始(初回はクリニックで看護師と)
- 降圧薬は継続
ポイントは、「足し算」ではなく「置き換え」で組んだこと。新しい習慣を増やすと続きません。今ある行動を別のものに「置き換える」と、負担が圧倒的に少ない。
Month 2〜4:体重が動き始める
ウゴービの効果と食事の置き換えで、最初の3ヶ月でこう動きました。
| 時点 | 体重 | BMI | 腹囲 |
|---|---|---|---|
| 初診 | 93.0kg | 31.0 | 102cm |
| 1ヶ月 | 90.2kg | 30.1 | 99cm |
| 2ヶ月 | 87.8kg | 29.3 | 96cm |
| 4ヶ月 | 84.5kg | 28.2 | 93cm |
Aさんからは「我慢している感覚がない。むしろ食事が楽しくなった」というご報告。
実は、食欲が落ち着くと「何を食べるか」を選べるようになるんですね(私だってラーメンが食べたい でも書きました)。Aさんもまさにこの状態でした。
Month 5〜8:薬を1剤減らせた瞬間
5ヶ月目の血液検査と血圧の結果が、Aさんの転機でした。
- 血圧 138/88 → 122/76(降圧薬2剤のまま)
- HbA1c 5.9% → 5.5%
- 中性脂肪 220 → 110
- AST/ALT(肝機能)正常化、脂肪肝の所見も大きく改善
ここで、連携医に相談のうえ、降圧薬を1剤に減量しました。Aさんが診察室で「あの薬、減らせるんですか・・?」と目を丸くしたのを覚えています。
「飲む薬が減る」は、卒業プログラムの大きなマイルストーンです。
Month 9〜12:ウゴービを漸減・離脱
体重が 80.2kg(BMI 26.8) で安定したところで、卒業フェーズに入ります。
漸減のステップ:
- Month 9:ウゴービを 2.4mg → 1.7mgへ
- Month 10:1.7mg → 1.0mgへ
- Month 11:1.0mg → 0.5mgへ
- Month 12:離脱、自費の自己管理フェーズへ移行
この間、食事・運動の習慣は維持。むしろ、薬が抜けてから「自分の食欲を観察する」感覚が研ぎ澄まされたとAさんはおっしゃっていました。
卒業時点で:
- 体重 76.0kg、BMI 25.4
- 腹囲 85cm、内臓脂肪 84cm²(正常化)
- 降圧薬1剤、ウゴービ離脱
- 脂肪肝の所見なし
卒業から6ヶ月後、Aさんは
卒業後は 3ヶ月に1回のフォロー診察 で経過を見ています。
卒業から半年(現在)の状況:
- 体重 76.5kg(維持)
- BMI 25.6(維持)
- リバウンドなし
- 降圧薬は1剤のまま、血圧 120/76
Aさんに「何が一番効いたと思いますか?」と尋ねたら、こうおっしゃいました。
「先生が無理させなかったことです。最初に『これなら続けられそう』と思える計画を一緒に作れた。それが全部です。」
医師として、これ以上ない言葉でした。
Aさんのケースから学ぶ3つのこと
① ダイエット歴は「失敗」ではなく「資産」
何度も挑戦したという事実は、自分の体への関心の証。卒業プログラムのスタートラインとしては、十分すぎる素材です。
② 「足し算」より「置き換え」
新しい習慣を増やすのではなく、今ある行動を別のものに置き換える。負担が少ないから続く。これが長期戦の鉄則です。
③ 薬は「ゴール」ではなく「橋渡し」
ウゴービは卒業のための 橋渡し であって、目的地ではありません。橋を渡り終えたら、自分の足で歩いていける。それが卒業プログラムの設計思想です。
詳しくは 卒業プログラムとは何か もご覧ください。
Doctor’s Fitness診療所の卒業プログラム
Aさんのケースは「典型例」ではありますが、もちろん全員がこの通りに進むわけではありません。
ただ、当院の卒業プログラムでは、
- 適応条件のチェック(eligibility)
- 無理のない個別設計
- GLP-1の適正使用
- 食事・運動・睡眠の3本柱
- 漸減・離脱フェーズ
をひとつの流れとして提供しています。料金や保険の話は料金ページに、よくあるご質問はFAQにまとめています。
よくある質問
Aさんはどれくらいの期間で卒業したのですか?
初診から卒業まで約12ヶ月。導入の4週間、増量・維持の8ヶ月、漸減・離脱の3ヶ月という構成です。ご本人の生活ペースに合わせて柔軟に調整しました。卒業後は3ヶ月ごとのフォローを継続しています。
薬をやめてもリバウンドしないのですか?
Aさんは卒業後6ヶ月時点でBMI 25.4を維持。完全に薬なしで、食事・運動・睡眠のリズムで管理されています。リバウンドのリスクをゼロにはできませんが、設計次第で十分に再現可能です(GLP-1をやめたら本当にリバウンドするのか)。
誰でもAさんのように卒業できますか?
残念ながら全員ではありません。体質・併存疾患・生活環境などによって難易度は変わります。ただ、適応条件を満たす方であれば、半年〜1年半の幅で多くの方が「薬を離脱して維持」のフェーズまで到達されています。
費用はどれくらいかかりましたか?
Aさんのケース(12ヶ月)で、初診・月次フォロー・ウゴービ・血液検査などを含めて、自費でおおむね年間60万円台でした(2026年5月時点)。最新の料金はLPでご確認ください。
仕事を休まずに通えますか?
はい、Aさんも会社員として勤務しながら通われていました。月1回の診察は土曜・夕方に対応可能。自己注射は自宅で完結します。
関連記事 / 他サイトの情報
- 卒業プログラムとは何か
- GLP-1をやめたら本当にリバウンドするのか
- 私自身がBMI 28.6から卒業プログラムを始めた話
- 「私だってラーメンが食べたい」食欲との付き合い方
- 食事設計の細かい話は姉妹サイトの eat.doctors.fitness もどうぞ
- 運動設計については rx.doctors.fitness を参照
Aさんは特別な人ではありません。「最後にもう一回だけ」とおっしゃっていた、普通の40代の方です。違ったのは、仕組みを変える勇気 を持って来院されたこと。
「自分も、もしかしたら・・」と思った方は、まずLINEからお気軽にご相談ください。あなたのケースに合わせて、無理のない設計をご提案します。
それでは、また!
次回は「『BMI 35以上』の方へ — 当院の対応」についてお話しします。
よくある質問
- Q.Aさんはどれくらいの期間で卒業したのですか?
- A.初診から卒業まで約12ヶ月。導入の4週間、増量・維持の8ヶ月、漸減・離脱の3ヶ月という構成です。ご本人の生活ペースに合わせて柔軟に調整しました。卒業後は3ヶ月ごとのフォローを継続しています。
- Q.薬をやめてもリバウンドしないのですか?
- A.Aさんは卒業後6ヶ月時点でBMI 25.4を維持。完全に薬なしで、食事・運動・睡眠のリズムで管理されています。リバウンドのリスクをゼロにはできませんが、設計次第で十分に再現可能です。
- Q.誰でもAさんのように卒業できますか?
- A.残念ながら全員ではありません。体質・併存疾患・生活環境などによって難易度は変わります。ただ、適応条件を満たす方であれば、半年〜1年半の幅で多くの方が「薬を離脱して維持」のフェーズまで到達されています。