こんにちは、院長の宮脇大です。
「オンライン完結で簡単処方」というGLP-1の広告、よく見かけますよね。家から一歩も出ずに、診察も処方も完結。便利そうに見えます。
でも医師として、ここには看過できないリスクがあると思っています。今日はそれを正直にお伝えします。
オンライン完結処方の典型パターン
SNS広告等で見るオンラインGLP-1処方の流れは、おおむねこんな感じです。
- ウェブ問診フォームに回答(身長・体重・健康状態をテキスト入力)
- オンラインビデオ通話で「医師」と数分の問診
- 薬が自宅に配送される
- 副作用があれば再度オンライン or 自己判断
- 継続したい場合は次月の薬が自動配送
これだけ見ると「便利!」と思うかもしれませんが、医療としていくつかの重要なステップが抜けています。
抜けている医療ステップ
1. 対面での身体評価
医師は問診だけでなく、患部を触る・観察するなど、五感を使って情報を集めます。
GLP-1治療開始前に最低限必要な評価:
- 腹部の触診(肝臓の腫大、圧痛の有無)
- 甲状腺の触診(腫大の有無)
- 心音・呼吸音の聴取
- 末梢の浮腫評価
これらは画面越しには絶対にできません。
2. 血液検査
GLP-1は重篤な副作用のリスクがあり、開始前と継続中に血液検査が必要です:
- 膵酵素(膵炎の早期発見)
- 肝機能・腎機能
- 血糖・HbA1c(低血糖リスク評価)
- 甲状腺機能(甲状腺髄様癌スクリーニング)
オンライン完結では、これらの検査が省略されるか、患者さん自身で別途検査を受ける形になりがちです。
3. 副作用の早期発見
GLP-1の重篤な副作用(急性膵炎、胆嚢炎、甲状腺髄様癌など)は、初期症状が軽微で見逃されやすい。
- 上腹部の鈍痛(膵炎の初期症状)
- 右上腹部の違和感(胆嚢炎の初期症状)
- 頸部のしこり(甲状腺髄様癌の初期症状)
これらを早期発見するには、定期的な対面評価と検査が必須です。「症状が出てから受診」では遅いことがあるんです。
実際に起きうるトラブル
医師として、これまでに見聞きしたトラブル例を挙げます(個人情報に配慮して一般化しています)。
ケース1: オンライン処方で半年間ウゴービを使用していた30代女性。腹痛で当院に救急受診。検査で急性膵炎が判明。早期治療で改善したが、処方元のオンラインクリニックは「対応できないので最寄りの病院に」と回答していた。
ケース2: SNS広告のマンジャロを2年使い続けた40代男性。健康診断で甲状腺機能異常を指摘され、当院でフォロー。幸い悪性所見はなかったが、それまで一度も血液検査を受けていなかった。
ケース3: BMI 22の20代女性が美容目的でオンライン処方を受け、強い吐き気・脱水で救急搬送。本来は適応外の処方だった。
すべてのオンラインクリニックがこうだとは言いません。ただ、こういうリスクが現実にある、ということです。
オンライン処方が許容できるケース
「すべてのオンライン処方がダメ」とは言いません。
以下の条件を満たすなら、オンライン処方も一つの選択肢になり得ます:
- 初診は対面で身体評価・血液検査を実施
- その後、安定すれば一部のフォローをオンライン化
- 副作用時には対面評価できる体制がある
- 適応条件(BMI、健康障害)を医師が評価している
- 適応外処方の場合は説明と同意がある
つまり、「対面とオンラインのハイブリッド」であれば医療として成立します。
純粋なオンライン完結だけが問題なんですね。
当院の方針
Doctor’s Fitness診療所では、肥満症のGLP-1治療は対面診療を基本としています。
- 初診は対面で身体評価・血液検査
- 月1回の対面フォロー
- 副作用時の対面評価
- 必要時の検査(腹部エコー、CT、内分泌検査など)
これは患者さんの安全性を担保するための、医学的に必要な体制です。
オンライン処方より「面倒」「お金がかかる」ように見えるかもしれませんが、医療の本質を守るためにこの方針です。
安全に治療を受けたい方へ
「便利さ」と「安全性」は時に相反します。
体に直接影響する治療を受ける時、私は安全性を優先することをお勧めします。
ご質問があればLINEからお気軽にどうぞ。「オンラインクリニックで治療中だけど、対面評価を受けたい」というご相談でもOKです。
ご相談はLINEからいつでもどうぞ。
それでは、また!
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よくある質問
- Q.オンライン完結はすべてダメということですか?
- A.そういうことではありません。初診の評価と一定の検査がきちんと行われ、副作用時に対面評価できる体制があれば、オンライン処方も選択肢になり得ます。問題は、評価が省略され、薬の処方だけが完結してしまうケースです。
- Q.対面診察が必要な具体的な理由は何ですか?
- A.①身体所見の確認(腹部圧痛、甲状腺腫大など)、②血液検査による副作用評価(膵酵素、肝機能など)、③体組成測定、④全身状態の評価。これらはオンラインでは代替できません。
- Q.オンラインで始めて、不安になったらクリニックに行けばいいのでは?
- A.理論的にはそうですが、副作用の多くは早期発見が大事で、症状が出てからの受診では遅いケースもあります。最初から定期的な医療フォローのある体制で始める方が安全です。