こんにちは、院長の宮脇大です。
「血圧の薬、ずっと飲み続けないとダメなんでしょうか?」
これも、外来でよく聞かれる質問です。
肥満を合併している高血圧の場合、減量によって降圧薬を減らせる、あるいは中止できる可能性があります。今日はそのメカニズムと、現実的な見通しをお話ししますね。
「体重1kgで血圧1mmHg」のシンプルな関係
複数の研究の統合解析(メタアナリシス)で、体重1kgの減量で収縮期血圧(上)が約1mmHg、拡張期血圧(下)が約0.5mmHg低下することが報告されています。
シンプルすぎる関係に思えますが、これは大規模なデータに裏付けられた数字です。
仮に10kg減量できれば、血圧が10mmHg程度下がる計算。薬1剤分の降圧効果に匹敵します。
なぜ減量で血圧が下がるのか
肥満があると、なぜ血圧が上がるのか。主に4つのメカニズムがあります。
① 交感神経の過剰活性
内臓脂肪が増えると交感神経が活発になり、心拍数と血管収縮が増えて血圧が上がります。
② レニン-アンジオテンシン系の活性化
内臓脂肪はアンジオテンシノーゲン(血管を収縮させるホルモン前駆体)を分泌します。
③ ナトリウム貯留
肥満ではインスリン抵抗性により、腎臓でのナトリウム再吸収が増え、血液量が増えて血圧が上がります。
④ 睡眠時無呼吸との合併
肥満の方は睡眠時無呼吸を合併しやすく、これも血圧を押し上げる大きな要因です。
減量はこれら全てに対して、良い方向に作用します。
当院での減量と高血圧改善の経験
ウゴービと生活習慣改善を組み合わせた卒業プログラムで、降圧薬を減量・中止できた方の例:
- 降圧薬2剤併用 → 8%減量後 → 1剤に減量
- 降圧薬1剤、家庭血圧 135/85 → 12%減量後 → 薬中止、120/75 を維持
ただし全員がうまくいくわけではありません。長年の高血圧で動脈硬化が進んでいる場合や、遺伝的要因が強い本態性高血圧では、減量だけでは十分下がらないこともあります。
「自己判断での中止」は絶対NG
「体重が減ったから、薬は自分でやめます」 ── これは絶対にやめてください。
血圧は自覚症状なく上下するので、自己判断で薬をやめて急上昇すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが跳ね上がります。
薬の減量・中止は、必ず主治医の指示で、家庭血圧の記録を見ながら段階的に行います。
Doctor’s Fitness診療所では
当院では、減量とあわせて家庭血圧をきちんと記録していただきます。一定期間安定して血圧が下がっていることを確認した上で、降圧薬の減量を主治医と相談しながら進めます(高血圧で他院に通院されている方は、紹介状を介して連携します)。
詳しい流れは卒業プログラムをご覧ください。
それでは、また!
次回は「肥満症の食事療法 — 何をどう変えるべきか」についてお話ししてみますね。
関連記事:
- 肥満症と糖尿病 — 寛解は可能か
- 卒業プログラムとは
- 食事改善の詳細は: eat.doctors.fitness
よくある質問
- Q.減量だけで血圧が下がるエビデンスはありますか?
- A.あります。複数の研究の統合解析で、体重1kgの減量で収縮期血圧が約1mmHg、拡張期血圧が約0.5mmHg低下することが報告されています。10kg減量できれば、血圧10mmHg程度下げる効果が期待できます。
- Q.自己判断で降圧薬を減らしてもいいですか?
- A.絶対にNGです。血圧は自覚症状なく変動するため、薬の減量・中止は必ず主治医の指示で行ってください。自己判断で中止して血圧が急上昇すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
- Q.減量しても血圧が下がらない場合はありますか?
- A.あります。本態性高血圧の中でも遺伝的要因が強いタイプは、減量だけでは十分下がらないことがあります。それでも減量は心血管リスクの全体的な低減につながるので、薬と併用しながら続ける価値があります。